しかし、獣医学から見ると眼の病気の多い犬種でもあります。
この子は、昨年の春に眼がおかしいと来院されました。
診察をすると、右目だけが異常に赤く、涙も出ていました。
すぐに、眼圧を測定すると8mmHg(正常は12~20mmHg)と低く
炎症などからぶどう膜炎と診断しました。
コッカーは眼の病気が多いので、精密検査を行い、
弱令性白内障が見つかりました。
この病気は先天性の白内障で、若い犬が白内障を起こし、
眼が見えなくなる病気です。
この子も、コッカーという犬種から遺伝性に発症したと思われました。
本院では、専門の機械が無いことから、白内障の乳化術は
大学にお願いいたしました。
大学で、すぐに手術を行い、眼は見えるようになりましたが、
術後、半年で、ぶどう膜炎を再発し、緑内障にもなりました。
大学と連携し、なんとか、治療していましたが、
先週、急に眼圧が上がり、来院された際には、眼圧が上昇しすぎて
急遽、大学での精査を行い、緑内障により、視覚がなくなり、
緑内障の手術が必要と診断されました。
大学と飼主さんと、本院と3者で相談し、本人での外科的治療となりました。
術前です。
緑内障により、瞳孔が散大し、目やにも出ています。
このように、強膜は血管が怒張し、いわゆる『牛眼』となっています。
手術は緑内障の場合、大きく分けて2つに分類されます。
1.視覚が残り(見えている場合)・・・眼房水の産生を抑制、流出を促進する方法
2.視覚がなく、改善できない場合(見えていない、もしくは手術しても改善が見込めない場合)
今回は大学でERG(網膜電位)の検査で視覚はなくなっていること、
また、視覚の開腹は見込めないことから、2、の手術になりました。
2、には ○シリコン義眼挿入術
○毛様体破壊術
○ゲンタマイシンの硝子体内注入術
○眼球摘出術
などがあります。
上記の中で、どれがベストかは全て飼主さんとお話をしますが、
今回の場合、白内障手術により、人工レンズが入っていること、
見た目も重視、また経済的なこと、再発しないことなどを考え、
義眼と薬液注入のどちらかでしょうねと飼主さんと相談しました。
飼主さんは色々、悩まれ薬液注入を選択されました。
手術は、本院でも良く行う手術で、難しい分類には入りませんが、
かなり眼圧の上昇していた子なので、術後、眼を一時的に塞ぐ
手術も行い、手術は無事終了し、術後、3時間後には帰宅されました。
術後は、眼をこすらないように、エリザベスカラーを付けていただき、
痛み止め(抗炎症剤)を飲ませていただき、1週間後に抜糸となりました。
このように、緑内障は犬の場合、ほとんどの子が
点眼薬でコントロールできなくなります。
この子は、飼主さんも熱心で大学まで行かれ、超音波乳化術と
人工レンズを入れていただいていますが、術後、ぶどう膜炎を起こし
緑内障になり、手術となりました。
コッカーの若令性白内障は遺伝的な要素が強く
この子も遺伝的な疾患と思われます。
緑内障は早期に見つけると、点眼薬でのコントロール
もしくはレーザーにての眼圧のコントロールも可能になりました。
怖い病気ですが、早期に見つければよい結果につがることも多いので
コッカー、ダックス、シーズー、プードルの飼主さんは目と目を合わせてにらみっこしてください。
何かおかしいと思う点があるかもしれません。
この子は、術後、片方の目が健在なので点眼薬とともに
元気に過ごしています。
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