新千歳動物病院のブログ
北海道の新千歳動物病院での症例(病気、手術など)を掲載したり、病院内で起こった事柄などを日々、書き込むブログです。 可愛い動物に起こったことを、飼主さんに向けて情報を発信していきます。

プロフィール

動物病院 院長

Author:動物病院 院長
関西出身 47歳

獣医学博士
獣医麻酔外科学会 評議員

妻、子供、犬4頭、猫1頭、フェレット2匹
ハムスター2匹と暮らしています。

趣味;登山、犬と一緒にクロカンスキー。
   フライフィッシングも超初心者です。

 

 

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犬の尿道腫瘍の外科手術
 寒い冬の時期になると、尿路疾患の患者さんが増えます。
猫では、特発性膀胱炎、尿石症、膀胱結石、
犬では、膀胱炎、膀胱結石などが多く来院されます。
 寒い時期に多くなるのは、お水を飲む量に関係しているとも言われています。

 この子は、6ヶ月くらい前から血尿で近くの病院で膀胱炎の治療を受け、
良くなったり、悪くなったりを繰り返していたようです。
 しかし、一向に良くならないので、遠方より、お越しになりました。
本院での診察は、レントゲン、超音波検査、血液検査、尿検査を行いました。
超音波検査では、膀胱内に出血、膀胱の腫脹などが認められ、
尿検査でも、出血と移行上皮細胞が大量に出ており、慢性の膀胱炎が認められました。
しかし、排尿障害も伴うこと、かかりつけの病院で膀胱癌と言われたことから、
念のため、膀胱の逆行性尿路造影までさせていただきました。

 おちんちんから造影剤を流すと、このように、尿道が変形し、さらに尿道から造影剤が漏れています。

尿道 造影2

このレントゲン写真から、膀胱の腫瘍というより、尿道の腫瘍を疑い、
精密検査を行いました。
 検査の結果、『移行上皮がん』であると診断されました。
『移行上皮がん』は膀胱および、尿道に発生しやすい悪性の腫瘍です。
現在、根治を目指すには、外科的に切除するしかありません。
内科療法では、完治は難しく、徐々に悪化すると言われています。
 このことを飼主さんにお伝えし、現状でも排尿障害(自力での排尿)が困難なため、
外科的な手術を選択されました。
 手術は無事、終了したものの、術後、2週間近くして、排便(ウンチを出すこと)が
難しくなり、来院されました。
直腸検査で、大腸を強く圧迫するものもがあり、検査の結果、再発でした。
 その後、再手術をするものの、腫瘍が短時間の間に再発を起こし、
状態は改善されませんでした。
 手術から数日後、自宅で亡くなられました。

 尿道 造影1


 飼主さんはとても熱心で、遠方から起こしになり、
大學まで行っていただきましたが、腫瘍の進行が早く、天国にめされました。

 今まで、膀胱、尿道の腫瘍を何例も見てきましたが、
この子は、大学の先生も初めてというくらい、進行が早く、
悪性度の高い腫瘍でした。

 この子の場合、近くの病院で血尿が見つかり、膀胱炎の治療で改善を繰り返したいたので、
確定診断、手術まで時間がかかっていたのかも知れません。
 膀胱の腫瘍の場合、膀胱炎の治療で改善することが多く、
早期発見が遅くなるといわれています。
とくに、膀胱炎の場合、おしっこの回数が多く、病院に来られる際には
膀胱内におしっこが溜まっていない場合が少なくありません。
しかし、ここ数年、犬猫の膀胱腫瘍が全国的に増加傾向になります。
なので、学会などでも初診時から超音波検査をルーチンに行ったほうがよいと言われています。

 膀胱、尿道の腫瘍は悪性の移行上皮がんも多く、
進行もゆっくりな事も多く、発見が遅れると、手術を行っても
転移している場合が少なくありません。
また、尿路系の腫瘍の場合の抗がん剤の効果も報告が多くなく、
今後の研究に期待しているところです。

 この子の飼主さんは、とても熱心で、お忙しい中、大学にも行っていただき、
本当によくしていただきました。
もう少し、早く確定診断までしておけば・・・と思いました。
しかし、そのことは、飼主さんも同じ考えでしょうから、あまり言えません。。。
腫瘍の場合、食欲、元気が無くなるころには、重症化している場合が多く、
お年をめしてきた犬や猫の飼主さんは、おかしいな?と思えば、病院に相談してください。

 この子のことは、大学をはじめ、開業医の私自身も考えさせられる症例でした。
飼主さんは、この子がかわいく、遠くからお越しになり、大学まで行っていただき、
さらに、根治を考え、膀胱、尿道全摘出術までしていただきました。
 しかし、手術した時には、すでに転移していたのか、再発までの時間が早く、
飼主さんも、ワンちゃん自体にも負担をかけてしまいました。
 飼主さんには、とても良くしていただき、できる限りのことをしていただきました。
それに応えるようにワンちゃんもがんばりました。
 今は、痛みや、苦しさから解き放たれていると思います。
このような子を1例でも助けれるように、できる限りのことをしたいと思います。

 おつかれさまでした。

 
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