北海道の新千歳動物病院での症例(病気、手術など)を掲載したり、病院内で起こった事柄などを日々、書き込むブログです。 可愛い動物に起こったことを、飼主さんに向けて情報を発信していきます。
プロフィール

Author:動物病院 院長
関西出身 48歳
獣医学博士
獣医麻酔外科学会 評議員
獣医腫瘍学会
獣医皮膚科学会
日本獣医師会
札幌小動物獣医師会
妻、子供、犬3頭、猫2頭、フェレット1匹
と暮らしています。
趣味;登山、犬と一緒にクロカンスキー
自転車
バイク
川下り
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先日、飼主さんが慌てて病院にお電話をいただきました。
内容は、札幌の実家で犬が居なくなったというものでした。
居なくなったとは親戚の方が散歩に行き逃亡したようです。
飼主さんは、すこしパニックになっているようなので、お話をさせていただきました。
保護センター、警察、区役所、保健所にワンちゃんが居なくなった旨を
お伝えし、近所にいることが多いので、近くを捜索してくださいとお伝えしました。
2日後、近くの方が保護していただいて無事、帰宅できました。
このように、愛犬がいなくなった時、ほとんどの飼主さんが困ると思います。
そういった事をふまえ、現在、犬、猫、うさぎなどにマイクロチップを入れようと
獣医師会をはじめ、自治体も活動を行っています。
これには、愛犬や愛猫が居なくなった時だけではなく、捨てられる動物を減らすことにも
つながると考えられています。
本院でも2年前からマイクロチップを導入し、徐々にではありますが、
希望される飼主さんが増えてきています。
装着はいたって簡単です。
1.皮膚を消毒
2.皮下に挿入
これで終了です。


病院によっては、鎮静や麻酔が必要なところもありますが、
本院では今まで、ネコちゃんにも装着させていただいていますが、
痛がらず、出血もありません。
手続きは、病院がすべて行うので、飼主さんは、ワンちゃんの体調の良い時に
来院していただいて、飼主さんの前で挿入します。
時間は1分くらいです。
以前は、マイクロチップがMRI撮影時に干渉するといわれていましたが
現在、そのようなことも無く、本院でも問題はないです。
今後の課題は、マイクロチップを入れても、
そのチップを認識するリーダーという機械をすべての動物病院が持っていないということです。
現在、マイクロチップを装着できる病院では、ほとんどリーダーがあると思いますが、
いまだ、動物病院の中には、マイクロチップを装着できない病院もあるのが事実です。
千歳のように、自治体がリーダーを持っていると、飼主さんも安心されますが、
どこの病院でも、その子が誰の愛犬か愛猫か分かると良いですね。
また、これを期に、捨てられる犬、猫が減れば良いのですが・・・。
マイクロチップを入れる時に、このようなことを考えながら、入れています。
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現在、本院ではお歳をめしたワンちゃん、ねこちゃん、
また、心臓病を患った子の手術が増えています。
手術前に、術前検査を行い、麻酔のリスク、点滴の種類、
事前に飲んでいただく薬、麻酔薬などを考慮し、安全に努めています。
さらに、麻酔管理を安全なものにするため、貧血、心臓病、腎不全などの
、基礎疾患を持った子には、術前1~3時間前から酸素室に入っていただき
『酸素化』を行っております。
また、術後も酸素室に入っていただき、心臓などの負担を軽減しています。
もちろん、肺炎などの呼吸器疾患、心臓病などの循環器疾患、
熱中症などにも使用しています。

この子は、眼と腫瘍の手術を受ける予定で、健康診断を行ったところ、
重度の心不全が見つかり、術前に飼主さんと相談し、心臓を守るために
事前に心臓に作用するお薬、心臓を守るお薬は使用し、また、十全に酸素室で
酸素化を行い、無事、手術が終わった後も、酸素室で様子をみていました。
手術の後、3時間くらい酸素室に入っていただき、当日の夜に
酸素室から出し、呼吸などに問題がないことを確認し、飼主さんと帰宅されました。
翌日、飼主さんと一緒に来院し、食欲もあり、元気もあると、喜んでいらっしゃいました。
現在、本院では、自宅での酸素吸入を可能にするため、
試験段階ではありますが、酸素発生装置の貸出を行っております。
問題点は、酸素発生装置が重いこと、また、自宅での酸素テントの設置が難しいことです。
これらを克服するれば、病院での治療と変わらず、自宅での治療が可能になります。
動物にとっては、慣れない病院より、慣れた自宅のほうがストレスも無く、良いこともあります。
しかし、すべての患者さんが自宅での治療が可能ではないので、そのあたりは担当獣医師と
相談のうえ、決められることが重要だと思います。
人と違い、動物は病院が自分を治してくれる場所という認識が強ければ良いのですが、
ほとんどの子は、ストレスになると思われます。
また、すべての子が入院、治療が可能であるとは限りません。
人のように『在宅治療』『ホスピス』などもあってよいと思います。
また、本院でも上記のような治療法を取り入れており、飼主さんからも
そういった選択があることを喜ばれています。
今後、人と同様に、治療の選択が広がり、かつ、自分の子に合った
治療法をもっと選べることが必要になると思います。
この子が酸素室に入った際は、飼主さんもびっくりされていましたが
術後の様子を見て安心されていました。
心臓病を持ち、手術に踏み切れない、また、悩まれている方には
少しでもリスクを軽減できる1つの方法だと思います。
皮膚を切る手術を受けた場合、ほとんどが縫合と言って皮膚を縫います。
その際、皮膚を縫う糸はどこの病院もナイロン製のナイロン糸を使用するか、
本院でも使用しているステープラーといって、金属のホッチキスのような器具を使い
皮膚を合わせます。
本院では、縫い跡が残らないように皮膚を縫合する前に
皮内縫合、もしくは真皮縫合を行っております。
この縫合法により、術後の縫合部の痒み、痛みが少なく
また、縫合した痕も残りづらいといわれています。
縫合する糸は、溶ける糸(吸収糸)を使用しています。
吸収糸は、30~120日で溶けるものがほとんどで、
縫う場所、縫い方などを考慮し、その都度、変えて縫合しています。
本院でも、吸収糸はいつも10種類くらい、用意して手術に取り組んでいます。
この写真は、腫瘍切除後に皮内縫合を終えた状態です。
人の場合、この後、テープで皮膚を止めて、手術は終了ですが、
動物の場合、そうはいきません。
この後に、数針、ナイロン糸で縫合して終了です。

ただ、この縫合をすると多少、手術時間がかかることが問題です。
麻酔に対して問題のあるこ、また、心臓や、内臓に大きな障害を持ち
麻酔時間を気にしないといけない子に関しては、この縫合を割愛しています。
このように、現在の医療は術後の美容も考え、
縫合法、縫合糸、皮膚の張力などを考慮し縫う時代に入りました。
手術したあとは、ほとんどの飼主さんが手術部位を見たくなり
また、手術の痕があると、かわいそうな気持ちになります。
自分の傷より、愛犬・愛猫の傷のほうが数倍、心がいたいので
なるべく、手術したことを思い出さないように、縫合できると良いと思っています。
この子も、現在、抜糸をおこない、
手術痕がほとんど残っていないので、喜ばれています。
お腹を出して寝ていても、手術痕が気にならないとおしゃっています。
少しでも、体の傷、心の傷にならないようになればよいですね。
14歳のワンちゃんが、飼い主さんと一緒に来院されました。
今までに乳癌、皮膚がんなどを克服し、数日前まで元気に
飼い主さんと生活されていました。
ところが、数日前から食欲が落ちてきて、散歩も行きたくないと
来院されました。
診察をさせていただくと、とくに異常所見はないので、
血液検査、レントゲンを行いました。
結果は、白血球が軽度上昇している以外に問題はありませんでした。
しかし、飼い主さんがいう、「この子が食べないのはおかしい」という一言が気になり、
超音波検査を行いました。
飼い主さんも立ち会っていただき、超音波検査を見ていただきました。

このように、脾臓の腫瘍に血管が入り込み、血流が認められました。
検査の結果、脾臓に直径2cm大の腫瘤が見つかりました。
検査後、飼い主さんと超音波で認められた腫瘤に関してお話をしました。
1.針を刺して検査するか。
2.試験開腹をして検査するか。
3.飲み薬で様子をみるか。 で相談しました。
飼い主さんは、ご主人が癌で手術をし、現在、元気がないこと、
また、この子を誰よりもご主人が可愛がっていることから、検査を選ばれました。
検査の方法も相談し、試験開腹を選択されました。
試験開腹までに、心電図、心臓の検査(超音波検査)、レントゲン検査を行い
他に腫瘍、リンパ節の腫脹がないことを確認し、検査を終了しました。
手術は、試験開腹と言って、脾臓に何ができているのか、
また、他の臓器に異常がないか、さらに、取り切れるものなら取るという
検査と治療を兼ねた方法です。
試験開腹には飼い主さんも立ち会い、手術は始りました。
お腹を開けて、脾臓をみると、明らかに腫瘤が認められました。

腫瘤に割面をを入れて院内で顕微鏡で検査すると、ほとんどがリンパ球で占められていました。
診断は、『リンパ腫(悪性リンパ肉腫)』でした。
血液系の腫瘍で、多くが多中心性の型です。
この型は、ワクチンや、健康診断の際、体表(体の表面にあるリンパ節)が腫れて
見つかることが多く、この子のように、体表リンパ節が腫れず診断されることは稀です。
手術後、2日で退院し、大好きなお父さんと元気にしています。
しかし、現在、この病気と戦うため、抗がん剤治療を始めています。
1日でも、大好きなお父さんと一緒にいるため、また、癌に負けないことを
お父さんに見せるため、小さな体で必死に頑張っています。
何とか、1日でも長生きできるように、手助けができたらなと思っております。
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