血尿で来院される猫の多くが猫泌尿器症候群です。
その中で、膀胱結石の症例はごく一部です。
猫の年齢にもよりますが、猫は、犬と異なり、
細菌性膀胱炎が少ないことから、初診時から超音波検査を行うことで
膀胱の状況、結石、腫瘍の除外診断が可能になります。
この子も、初診時に膀胱結石を認めました。
尿石分析からシュウ酸カルシウムが原因でしたので
手術をお勧めしました。

しかし、腎不全 ステージⅢでしたので
飼主さまは手術を躊躇していました。
飼主さまと相談し、食事療法と、サプリメントで経過を見ていました。
臨床症状はなくなり、飼主さまも安心されていましたが
3ヶ月後に血尿を認め来院されました。
原因は、膀胱結石で、超音波検査にて大きくなった結石を認め
飼主さまも、不安になっていました。
家族で検討され、手術を行う判断をされました。
当初のご心配であった、腎不全の麻酔に関して
病院と飼主さまで協議を重ね、手術を行うこととなりました。
手術は、可能な限り、麻酔のリスクを減らすこと
麻酔時間の減少、麻酔の深度、麻酔前の準備、
もちろん、手術法も検討を重ね、手術を行いました。
膀胱結石の手術は、開腹、膀胱切開、結石除去、閉腹の順番です。
・手術の前に、可能な限り術野の毛を刈っておく
・術前に水和を行い、酸素化もしておく
・術前鎮痛をおこなう
・術中の鎮痛管理を積極的に行う
・麻酔薬はセボフルレンに変える
・手術は、切開部の縮小、止血、手術機器の変更
以上を検討、変更し手術時間は、約30分で終了しました。
手術は膀胱の一部だけ腹腔外に出す方法、
膀胱を全て出す方法があります。
術前に、膀胱結石の数と、大きさを診断しておくことが重要です。

膀胱を露出し、事前に測定していた結石の直径よりも
やや大きく切開しました。

大きく切開すると縫合の時間がかかります。
さらに、膀胱は伸び縮みする器官なので、
大きく切開する必要はありません。
開腹手術では、猫の肥満も重要な要素で
皮下脂肪、腹腔内脂肪も手術時間の延長になります。
特に、膀胱へのアプローチの場合、
皮下脂肪の量が大切です。
このも、肥満傾向で、皮下脂肪、
腹腔内脂肪も多く、ここに時間がかかりました。

一度付着した脂肪は、痩せても減っていないことが
多いため、尿石症と診断された猫は肥満に気をつけたほうが
良いでしょう。
猫の腎不全は多く、中高齢の猫に多く発症します。
腎不全になると、麻酔のリスクや手術に関して
心配になると思います。
特に、麻酔に関しては心配な方も多くいらっしゃいます。
ほとんどの手術には、麻酔が必要です。
ただ、麻酔のリスク、麻酔時間の短縮は可能です。
担当の獣医師と術前にしっかりと話し合いをすることで
飼主さまの心配も減らすことができますし、
猫本人の負担も軽減できます。