猫の耳が腫れたと来院されることは多くありません。
この子は、以前から耳ダニが寄生し
ダニを殺す薬と、耳の掃除をおこなっていました。
犬の場合、耳血腫の原因は自己免疫性と言われています。
猫の場合は、現在、明らかな自己免疫性という論文は見当たりませんでした。
ただ、猫の場合、外耳炎が犬に比べ少ないことから
いまだ、分からないことが多いのかもしれません。
この子も耳ダニがいたので、以前に比べ
耳を掻いていることが多かったようです。
耳ダニが減ってきて、掻く回数も減ってきていましたが、
ある日突然、耳が腫れて来院されました。
耳血腫の治療には、
1、内科的治療:インターフェロン、止血材、免疫抑制剤などを使用する。
2、外科的治療 (1)手術で耳を切開し、縫合する
(2)カテーテルなどを利用し、排液を促す。
(3)持続吸引を行う。
飼主さんと相談し、内科的に治療を行いました。
しかし、1週間後も耳が腫れて、飼主さんが気になるようになり
手術となりました。
手術法も飼主さんと相談し、(1)の方法を選択しました。
手術は耳の毛を刈り、消毒しました。同時に、耳ダニの検査を行っています。
耳の毛を刈るとこのように、耳がパンパンに腫れています。


耳を切開すると、中には炎症を伴うフィブリンが大量に溜まっていました。

これらを鋭匙という、先のとがったスプーン上の器具を使用し
きれいに書き出します。
さらに、耳を反転しないよう、垂れ無いように元の状態に近づけて
縫合していきます。

本院では、耳血腫の縫合糸は特別なことが無い限り、吸収糸を使用しています。
この方法以外にもボタンを使用する方法、カテーテルのチューブを使用する方法など
病院によって、縫合法、縫合糸は変わってきます。
手術の4時間後には、耳を掻かないようにするカラーを着けてもらい
帰宅されました。