犬の皮膚には、皮膚病とも腫瘍とも分かりにくいものがあります。
この子も、1か月前から毛が抜けるとお近くの病院で診ていただいて
検査も行い、皮膚病を行っていました。
しかし、徐々に悪化したので、本院へ紹介で来院されました。
見た目は、このように、皮膚病のように見えます。
手術前で毛を刈った後なので
分かりにくいかもしれませんが、皮膚炎のようにも見えました。
飼主さんには、皮膚炎ではないこと、
また、腫瘍の可能性が高いことをお伝えし、手術をとなりました。
手術は、20分くらいで終了し、1週間後に抜糸となりました。
病理検査の結果は、『皮脂腺上皮腫』(Sebaceous epithelioma)
でした。
この腫瘍は、稀にリンパ節に転移することもある低悪性度の腫瘍でした。
このように、一見は皮膚病にも見える腫瘍があります。
また、術前検査でも皮膚炎と病理結果が出る場合もあるので
要注意の腫瘍です。
飼主さんも皮膚炎と思い、ゆっくりと経過を診ていましたが
心配になり、来院されました。
手術により、確実に切除でき、転移も認められませんでした。
腫瘍といっても、見た目は悪くなかったり、
院内の検査では、腫瘍と診断されないものもあります。
この子も、かかりつけの先生で針を刺して検査されたようですが、
腫瘍ではないと言われたようです。
これは、診断が間違っていたのではなく、
針検査(FNA,吸引バイオプシー)の正答率が低いのです。
ある報告では、正答率は60%とも言われています。
本院でお願いしている病理検査の病理医の先生は
針検査、細胞診は行いませんという方もいらっしゃいます。
理由は、やはり誤診が多くなるからだとおっしゃっていました。
もちろん、細胞診で確定診断が出ることも多々ありますが、
皮膚の腫瘍、肝臓の腫瘍などは、判定に困ることもあります。
飼主さんも、皮膚病だと思い、診察されていましたが、
心配で来院され、手術まで行い、安心されています。
術後、10日後、抜糸をおこない、現在は、毛も生えて来て
手術をされて良かったとおっしゃています。
病理の結果、転移もなく、再発もないので、
飼主さんは安心されています。
皮膚のしこりは必ずしも、悪性の腫瘍ではないですが、
治りの悪い、しこり、皮膚病は、腫瘍を疑ったほうが良いのかも
しれませんね。