考え付く方は、かなりの猫好きか、もしくは、医学関係者でしょうか。
この子は、以前から心筋症を患い、投薬治療を長年、行っていた子でした。
数年、問題なく、経過していましたが、急に、後肢が動かないと来院されました。
飼主さんには、心筋症の合併症として塞栓症を起こすことも伝えていました。
さらに、本院では、血栓塞栓症を誘発しやすい疾患の場合、
必ず、血栓予防薬を併用しています。
この子も、以前から予防のために、血栓予防薬を飲ませて頂いていました。
しかし、動脈に血栓が詰まってしまいました。
動脈血栓塞栓症の一番の症状は、後肢が動かない、冷たい、
肉球の色が悪い、触ると痛がるなどの症状があります。
この子も、すべての症状が出ていました。
これは、血栓溶解剤を入れる前です。

飼主さんに、血栓溶解作用のある薬が病院にあるので、
血栓を溶かす事を薦めました。
それ以外の治療法は、無いとも言われています。
以前は、外科的に血栓が詰まった部分の血管を切り開いて、
血栓物質を取り除くこともされてきました。
しかし、現在は、予後が悪いことから、薦める獣医師は少なくなっています。
飼主さんに、了解を得て、すぐに血管内に血栓溶解剤の点滴を始めました。
血管内点滴は1日かけてゆっくりと流しています。
痛みなどは伴いませんが、本人は、退屈でしょうね。
点滴を始めて1日後の状態です。

この子は、入院を始めて、翌日に退院となりました。
退院時には、ある程度、歩ける状態に戻りました。
現在、心筋症から来る、血管塞栓症は、予後が悪く、
とくに、内科療法で改善しても、血流障害から肢が壊死したり、
死に至ることもあると言われています。
本院でも、猫の心筋症の患者さんには、とくに、血栓溶解剤の服用を勧めていますが、
それでも、血栓ができることがあります。
血栓塞栓症は、いち早い、治療で、改善することもあるので、
おかしいと思われたら、すぐに、検査、内科療法をお勧めしています。
この子も、腎臓病、脊髄疾患、心筋症、甲状腺機能亢進症を患い、
飼主さんも、大変ですが、なんとか、1日でも長生きをさせようと
日々、努力されています。
本院でも、いつでも、血栓溶解を可能にするために、
随時、溶解剤などの心臓関連薬を常備しています。
まずは、疲れやすい、年をとったのに、異常に元気、
などの症状があれば、まずは、聴診からお勧めしています。