獣医では精巣と言います。
この精巣は生まれたときには陰嚢(たまぶくろ)にあるのでしょうか?
答えは、ありませんです。
じつは、男の子は生まれた時は精巣は玉袋の中にはありません。
精巣は生まれた直後は膀胱の横にあります。その後、1か月して陰のうの中に入ります。
しかし、遺伝的、もしくは別の要因で精巣が落ちて来ない場合があります。
これらを、『陰睾』『停滞精巣』と言います。
この子は、7年前の初診時に、停滞精巣を認め、
飼主さんに、将来、腫瘍になる可能性が高いことをお伝えしていましたが、
様子を見ることになりました。
先日、「先生、玉が癌になった」と来院されました。
良く見ると、このようように、おちんちんの横がポッコリと腫れています。

飼主さんに、精巣が腫瘍化していることをお伝えしました。
でも、癌化しているとは限らないこともお伝えし、手術をお薦めしました。
14歳と高齢になっているので、血液検査、レントゲン、心電図、超音波検査を行い、
手術・麻酔に耐えれるかを確認し、問題ないことをお伝えし、手術となりました。
手術は、通常では正中切開を行っていますが、
腫瘍が大きく、皮下に癒着しており、腫瘍の直上で切開を行いました。
手術は1か所の切開創から腫瘍化した精巣と正常の精巣を切除できました。

これが腫瘍化した精巣を皮下から取り出した写真です。

手術後はこのように、1ヶ所のみ切開したので、縫合を行い、手術は終了となりました。
手術後はその日の夕方にお迎えに来ていただき、退院となりました。
この飼主さんは、バーニーズも飼われており、その子も、停滞精巣で、
さらに、お腹の中に精巣があるタイプでした。
この子の前に、手術は済んでいたので、今回の手術のほうが楽だったとおしゃっていました。
かなり、タフな飼主さんです。
このように、陰のう内に落ちていない精巣がすべて腫瘍化するとは限りませんが、
陰のうの中に落ちている正常の精巣と違い、5~9倍腫瘍化しやすいと言われています。
精巣の腫瘍の手術は難しくない手術ですが、
腫瘍化する時にはかなり高齢になっていますので、
麻酔のリスクが高くなることが問題だと思います。
皮下にあると飼主さんが気づくことが多いですが、
お腹の中にあると飼主さんが気づくことが簡単ではありませんので、
精巣が触れる方は定期的に触ることをお薦めしています。
お腹の中の方は病院で超音波検査をお薦めしています。
ほとんどの場合、超音波で確認できますので。
腫瘍化した精巣は『セミノーマ』といって、良性の腫瘍でした。
飼主さんも癌でなく、安心されたようです。
お大事に。