新千歳動物病院のブログ
北海道の新千歳動物病院での症例(病気、手術など)を掲載したり、病院内で起こった事柄などを日々、書き込むブログです。 可愛い動物に起こったことを、飼主さんに向けて情報を発信していきます。

プロフィール

Author:動物病院 院長
関西出身
妻、子供、犬4頭、猫1頭、お魚と暮らしています。
趣味;カヌーと言いたいですが、
    まだまだ初心者です。
現在、獣医系大学院で研究、奮闘中。

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肛門のう切除術
 犬にも猫に肛門腺(肛門嚢)というものがあるのはご存じでしょうか。
他の動物だと、スカンクが臭い匂いを出して身を守ることはご存じだと思います。
その臭い物質を貯めて置くところが肛門腺(anal glands)です。
精巣腫瘍(停滞精巣からの腫瘍化)の外科手術
 精巣(金玉、きんたま)いろいろな言い方はありますが、
獣医では精巣と言います。
 この精巣は生まれたときには陰嚢(たまぶくろ)にあるのでしょうか?
答えは、ありませんです。

 じつは、男の子は生まれた時は精巣は玉袋の中にはありません。
精巣は生まれた直後は膀胱の横にあります。その後、1か月して陰のうの中に入ります。
しかし、遺伝的、もしくは別の要因で精巣が落ちて来ない場合があります。
これらを、『陰睾』『停滞精巣』と言います。

 この子は、7年前の初診時に、停滞精巣を認め、
飼主さんに、将来、腫瘍になる可能性が高いことをお伝えしていましたが、
様子を見ることになりました。
 先日、「先生、玉が癌になった」と来院されました。
良く見ると、このようように、おちんちんの横がポッコリと腫れています。

 犬 精巣

 飼主さんに、精巣が腫瘍化していることをお伝えしました。
でも、癌化しているとは限らないこともお伝えし、手術をお薦めしました。
 14歳と高齢になっているので、血液検査、レントゲン、心電図、超音波検査を行い、
手術・麻酔に耐えれるかを確認し、問題ないことをお伝えし、手術となりました。

 手術は、通常では正中切開を行っていますが、
腫瘍が大きく、皮下に癒着しており、腫瘍の直上で切開を行いました。
手術は1か所の切開創から腫瘍化した精巣と正常の精巣を切除できました。

 精巣腫瘍 オペ中
 これが腫瘍化した精巣を皮下から取り出した写真です。

 精巣腫瘍 オペ後

 手術後はこのように、1ヶ所のみ切開したので、縫合を行い、手術は終了となりました。
手術後はその日の夕方にお迎えに来ていただき、退院となりました。
この飼主さんは、バーニーズも飼われており、その子も、停滞精巣で、
さらに、お腹の中に精巣があるタイプでした。
 この子の前に、手術は済んでいたので、今回の手術のほうが楽だったとおしゃっていました。
かなり、タフな飼主さんです。

 このように、陰のう内に落ちていない精巣がすべて腫瘍化するとは限りませんが、
陰のうの中に落ちている正常の精巣と違い、5〜9倍腫瘍化しやすいと言われています。
 
 精巣の腫瘍の手術は難しくない手術ですが、
腫瘍化する時にはかなり高齢になっていますので、
麻酔のリスクが高くなることが問題だと思います。
 皮下にあると飼主さんが気づくことが多いですが、
お腹の中にあると飼主さんが気づくことが簡単ではありませんので、
精巣が触れる方は定期的に触ることをお薦めしています。
お腹の中の方は病院で超音波検査をお薦めしています。
 ほとんどの場合、超音波で確認できますので。

 腫瘍化した精巣は『セミノーマ』といって、良性の腫瘍でした。
飼主さんも癌でなく、安心されたようです。
お大事に。
輸血の重要性
 犬も猫も輸血はあるのでしょうか?また、血液型は?
と飼主さんに聞かれることが少なくありません。
本院ではワンちゃん、ネコちゃんに輸血を行っています。
また血液型もあります。
 輸血は、人と同じように行っています。
血液型もありますが、人のようなABO式ではありません。
犬ではDEA1.1 +、−で判断します。
猫ではA.B.ABのどれかで判断します。
なので、人のABO式の性格判断は使えません。残念です。

 輸血に関しては、年々、需要が増えてきています。
犬猫の長寿化、腫瘍外科の増加、血液疾患の増加などが要因です。
今まで、輸血が犬猫にあることさえ知らない方が多くいらっしゃいましたが、
現在は、動物の輸血も認知させつつあります。

 では、輸血はどのようにするのでしょう。
一番重要なのはドナー(供血動物)、血液を与える動物です。
下記がガイドラインとなっています。

 ○犬: 体重 25kg以上
      年齢 2〜8歳
      PCV(赤血球の濃度) 40%以上
      ワクチン接種を受けていること
      健康であること
    
  ○猫: 体重 5〜7kgの間
      年齢 2〜8歳
      PCV 35%以上
      ワクチン接種を受けていること
    
  上記以外にも詳細はありますが、上記に当てはまると良いとされています。

 実際に輸血を受け、腫瘍の切除を行った症例です。

 この子は、捨てられて、本院の患者さんが拾われた推定15歳のワンちゃんです。
拾われた際から、食欲・元気がなく、心配されて来院されました。
 初めて会った時から、痩せこけて見るからに弱弱しく、飼主さんが心配になることも
理解できる状態でした。
 飼主さんから健康診断をお願いされ、さっそく、健康診断を行いました。
健康診断の結果、重度の貧血、心臓病、腎臓病、腫瘍とさまざまな疾患が見つかりました。
結果を飼主さんにお伝えし、今後の方針を決めました。
飼主さんは、やはり目に見える大きな腫瘍が気になるようで、手術を希望されましたが、
現状、大きな腫瘍はあるもの、生きていくうえで重要な臓器の治療を優先させていただきました。
 心臓:弁膜症 
 腎臓:慢性腎不全
 貧血:再生不良性貧血(慢性化・腎臓疾患から来るもの)
上記の治療を内科療法で行いました。
 腎臓、心臓はなんとか改善しましたが、貧血は重症で中々、改善されませんでした。
そうこうしているうちに、腫瘍が徐々に大きくなり腫瘍の一部が自潰してきました。

 飼主さんと相談し、輸血を行い、そのうえで手術を行うことになりました。
飼主さんも手術に立ち会うことになりました。

 輸血の腫瘍 オペ前

 このように尻尾の下から肛門、外陰部を巻き込んで大きな腫瘍があります。
また、急激に大きくなってきたのか、腫瘍の表面が自潰しています。
これを見ると、飼主さんもつらくなってきますね。
 手術は、輸血、心臓の薬、止血剤などの薬を使用し、飼主さん立会いの下、
すぐに手術をはじめました。
 手術は、止血を行いながら腫瘍を切除しました。

輸血の腫瘍 オペ後

  術後は、順調に麻酔から覚めて、飼主さんも喜ばれていました。
取った腫瘍は、『血管外膜細胞腫』というものでした。

 輸血の腫瘍 腫瘍

 術後は、順調に回復し、翌日には退院となりました。
現在は貧血も徐々に改善し、心臓、腎臓の治療も行っております。
 
 このように、輸血を行うことにより、
手術を受けられ、助かる命も少なくありません。
 しかし、現状、人のような赤十字センターのようなものはなく、
飼主さんの知人、友人などに頼ることになっています。
今までは、動物病院で輸血用の犬を飼育しているところもありましたが、
現在、動物愛護の問題もあり、輸血目的もしくは、それを理由に飼育することは
大学でさえ、難しくなっています。
 本院では、輸血に協力してくださるボランティアの患者さんに
お願いしていますが、ボランティアの患者さんよりも、輸血希望の患者さんが
多いのが現状です。

 人でも、輸血となると大変なのに、ワンちゃん、ネコちゃんでは、
飼主さんも、とうの本人たちも辛いので、なかなか難しい問題です。
 これから、もっと多くの輸血で助かる子たちが増えてくると思われます。
その際、なんと手助けをしてもらえるような方が増えていくことをお願っています。

 この方も、近所の方が快く、輸血に承諾していただき、
飼主さんも、すぐにドナーが見つかり喜んでいらっしゃいました。
もちろん、供血していただいた患者さんには、血液検査、点滴などの
お金もかからず、説明もさせていただいた上での供血でしたので、
採血が終了した後も安心されて帰宅されました。

 手術を無事、終え、飼主さんは近所の方に本当に感謝していらっしゃいました。
この子は、捨て犬だったので、地域の方が総出で助けようとした幸せなワンちゃんだと思います。
 
 早く元気になって、みんなに感謝の姿を見せれるよう、現在、頑張っています。

 
   
犬の血管外膜細胞腫の外科手術
 16歳の盲導犬をしていたワンちゃんが来院されました。
長い間、目の不自由なかたのために働いてきたワンちゃんです。
飼主さんも、それに応えるかのうような、良い関係の2人?です。

 来院の目的は、お腹の左側の皮膚の下にしこりがあるということでした。
すぐに、触診を行いました。
確かに、何かあります。でも、しこりというよりは、ポニョポニョした塊です。
いわゆる、塊、しこりというのではなく、豆腐のような感じです。
16歳という年齢もあり、すぐに外科手術ということにはならず、
抗生剤、抗炎症剤で1週間様子を見ました。
1週間後にはかなり小さくなりましたが、やはり、ポニョポニョしています。

 そこで、飼主さんと相談し、16歳とはいえ、まだまだ長生きすることを考えると
腫瘍を放置することはできないということになり、外科手術に前向きに取り組みました。
 一番の問題点はやはり、年齢です。
大型犬の16歳となると、寿命と考える方も少なくないでしょう。
本院では、もちろん、年齢も重要な麻酔のリスクファクターですが、
それよりも、心臓、内臓に問題ないか、転移はしていなかなどが重要です。
 飼主さんに、手術を行う前にしっかりとした、検査を要望しました。
飼主さんもその辺りは納得され、検査を行いました。
 結果は、すべて問題なしということで、手術となりました。

外膜細胞腫 オペ前.

このように写真でみる、どこに腫瘍があるのか分からないです。

血管外膜細胞腫 オペ中

 皮膚を切開すると、このように、筋肉に付着し、さらに、筋層の間にも入り込んでいます。
筋層に入り込んだ腫瘍を筋肉ごと切除し、さらに、皮膚も切除します。
 この血管外膜細胞腫の大変なところは、取り残すと再発を繰り返し、
転移することあることです。
 現在、病理学的には悪性とも良性ともつかない腫瘍と言われていますが、
転移することを考えると、『転移しにくい悪性』と考えています。
 外科的に切除するか、放射線療法、抗がん剤療法があります。
本人では、マージンに余裕を持って切除できる場合は、外科切除のみ。
マージンが取れない、もしくは、深い場合は、放射線療法で小さくしておき
外科的に完全切除を行います。
 この腫瘍は、どこにでもできるので、1回目の手術で完全切除できるかどうかを
見極める必要があります。
 完全切除できない場合は、放射線療法を併用します。
しかし、現在、放射線療法は酪農学園大学と釧路の病院くらいしかありません。
なので、計画的な切除が必要になります。

 手術は無事終了し、当日に退院となりました。
飼主さんも16歳と高齢であることから、かなり心配されていましたが、
歩いて退院できたので、安心されていました。

皮膚型肥満細胞腫の外科手術
 皮膚にできるイボには、さまざまなものがあります。
年を召してきて、できるイボ、良性のイボ、悪性のイボなどです。

 今回は、パッと見は炎症かな?それとも良性かな?と判断に苦しむ
イボを飼主さんと相談のうえ、病理検査を行い、悪性と診断され、手術を行った症例です。

 9歳の雑種のわんちゃんが、皮膚が痒いと来院されました。
この子は、今までも季節性のアレルギーでこの時期には必ず、来院します。
アレルギーの治療もお話も終わりかけてたとき、飼主さんが思い出したように
「この皮膚のイボ、大丈夫?」と聞かれました。
 イボを見ると、確かに直径0.6cm大のイボが皮膚にできています。

皮膚型肥満細胞腫

このように、皮膚に小さな赤いポッチがあるので、
飼主さんが見ると、傷かな?噛んだのかな?と思うと思います。
また、肥満細胞腫は大きくなったり、小さくなったりする腫瘍です。
だから、飼主さんは腫瘍のイメージがなく、様子を見ていることが少なくないです。

 この子の場合も、当初、様子を見ていたようですが、
気になるので、他の用事の際、飼主さんから聞かれ、病理検査を行いました。
これに似た腫瘍で『形質細胞腫』という腫瘍がありますが、それは、
2〜3か月もするとなくなる良性の腫瘍です。
 肥満細胞腫は悪性の腫瘍、形質細胞腫は良性の腫瘍です。
外見は似ているものもあるので、確定診断は病理検査になります。
検査は、麻酔もせず、簡単に検査ができるのであれ?と思われたら検査をお薦めしています。

 さて、この子は、『肥満細胞腫』と診断されてからすぐに手術となりました。
肥満細胞腫は再発の多い腫瘍で有名なので、腫瘍から約2cmずつ
大きく切り取り、ドレーンチューブを装着し、その日に退院となりました。

肥満細胞腫 術中

 このように、腫瘍の近くには大きな栄養血管が多く
いつものようにさっさと手術をしていくとかなりの出血になるので、
腫瘍の手術の際は、より慎重に手術を行っています。
この血管は、腫瘍に入り込み、さらに、栄養を与えている血管であること、
また、この血管を切り取ることで後遺症などもないと判断し、切除しました。
 飼主さんには術前にかなり大きく切り取ります(マージンを多く取って)と
伝えていたので、ビックリしていなかったですが、話をしていないと
きっと、驚かれると思います。

肥満細胞腫 術後

 本院では、腫瘍の場合、ほとんどが術前に診断を付けるので
どれくらいの大きさになるとか、痛みなど、またドレーンの装着の有無なども
事前に決まっていることが多いので、特に術後、バタバタすることは少ないです。
 術後、切り取った腫瘍を再度、病理検査を行い、
転移の有無、マージンの有無、確定診断を行いました。
転移はなかったのですが、肥満細胞腫の中では、3段階の悪性のグレード分類の中の
真ん中の分類になったため、現在は、抗がん剤治療を行っています。

 抗がん剤と聞くと、飼主さんの多くが毛が抜ける、吐く、元気ないなどの
悪いイメージがあると思いますが、犬猫の場合、吐く、脱毛などの症状もありますが、
飼主さんが想像するような副作用は多くありません。
 
 飼主さんに、手術だけの場合、また、手術後に抗がん剤を行った場合、
その両方を、今までのエビデンスに基づきお話をさせていただき、
抗がん剤の治療を選択されました。
 現在、抗がん剤の治療を行っておりますが、副作用もなく
飼主さんも喜ばれています。
 抗がん剤は、2か月で終了するので、それまで飼主さん一緒に
この子を治す努力をしたいと思います。
  

 

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